2024.08.09
クリティカルシンキングを簡単に解説|例題やトレーニング方法も紹介
クリティカルシンキングは、問題解決を円滑に進めるうえで重要な思考法です。
しばしば耳にする言葉ですが、その必要性やロジカルシンキングとの違いは何かと問われると、説明ができずに困ってしまう人もいることでしょう。
本記事では、 クリティカルシンキングの意味やメリットのほか、クリティカルシンキングを実践するための4つのステップ、トレーニング方法・例題集について解説します 。
クリティカルシンキングを習得して仕事の効率を上げたい人は、ぜひ参考にしてください。
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目次
クリティカルシンキングとは
クリティカルシンキングとは、日本語で「批判的思考」を意味する言葉です。
簡単に説明すると、 「本当にこれが正しいのか?」という視点を持って物事を捉えることで、より確かな結論を導き出す思考法 です。
「批判」という言葉がついていますが、欠点を指摘するような思考法ではありません。
例えば、自社に都合の良い論理を作っていないか、あるいは事実と意見が分離されているか、といった問いを自らに投げかけます。
自分の考えを常に疑う姿勢がクリティカル思考では重要です。
クリティカルシンキングの必要性
クリティカルシンキングは 今後、必要性が高まる思考法 だといわれています。
なぜなら、企業が事業拡大するうえで、過去の成功体験が役に立ちづらい時代だからです。
市場環境や技術革新が日々目まぐるしく変化する現代では、これまで有効だった施策が通用しなくなってきています。
未知の問題に直面した際に、過去の経験や知識に頼らず、ゼロベースで解決策を考え抜く力が求められています。
つまり、厳しい競争を勝ち抜くために、クリティカルシンキングは必須の思考法となってくるのです。
クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違い
ロジカルシンキング(論理的思考)とは、物事を要素ごとに分解して筋道を立てて考える思考法で、自分の考えを相手に理解してもらうために効果的です。
ロジカルシンキングは与えられた課題や問題について、その答えを根拠となる事柄とセットにし論理的に説明します。
一方、クリティカルシンキングでは、与えられた課題や問題自体の本質を見極め、前提から「これで良いのか?」と疑うことから始めるのです。
クリティカルシンキングとロジカルシンキングの違いは、 前提とする課題・問題を検証するかしないか という点にあります。
とはいえ、どちらかの思考法が良い(悪い)というものではありません。
例えば、Aという商品の売上シェアが10%増加したとしましょう。
ロジカルシンキングでは、売上が増えた事実は事実として捉え、なぜ売上が増えたのかという要因を追求します。
しかし、クリティカルシンキングでは、まず売上が増えたこと自体に疑問を投げかけ、「本当に売上が増えているのか?」と、前提となる事実を検証するところから結論を導きます。
もし、「市場自体が縮小しており、数字上は売上が伸びたように見えただけ」という事実が明らかになれば、おのずと打ち手は変わってくるでしょう。
ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの2つをうまく使うことで、課題に対して多角的にアプローチでき、解決策を見出せるようになります。
クリティカルシンキングで得られるメリット
クリティカルシンキングで得られるメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 数値データから判断できるようになる
- 物事の本質を見極められる
- 検討した内容の矛盾や漏れを防止できる
数値データから判断できるようになる
クリティカルシンキングは主観を取り除いた中立的な立場で思考するため、 数値データに基づいた判断ができます。
また、定量的な事実を根拠にするので、属人性を除いた思考もできます。
過去の失敗や成功といった経験則に基づいた判断を回避するのに有効です。
物事の本質を見極められる
クリティカルシンキングは1度考えたら終わりではなく「本当に正しいのか?」と繰り返し考えるため、 物事の本質を見極められます 。
思考する過程では複雑に絡み合った要因が整理され、結果への影響度が低い要因はそぎ落とされます。
つまり、無駄なものを取り除くことで、起こっている問題における本当の原因に迫れるようになるわけです。
検討した内容の矛盾や漏れを防止できる
クリティカルシンキングはチームや個人で当たり前とされていた前提条件を疑うので、 検討した内容の矛盾や抜け漏れが防止できます 。
なぜなら、検討して導いた結論が完璧とは限らないと思考するからです。
クリティカルシンキングの思考法は、より精度の高い結論となり、問題を迅速に解決する効果が期待できます。
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クリティカルシンキングの基本の考え方
クリティカルシンキングの考え方は、以下の3点を基本にしています。
- 目的は何かを意識する
- 思考のクセがあることを前提に考える
- 考え続ける
図解で示すと以下の通りです。
目的は何かを意識する
「何のために考えるのか」という目的は、常に意識しましょう。論点を定めることで、不要な議論に時間を費やすことを避けられるからです。
例えば、ある商品の売上が10%増加したとします。
売上が増加した理由を考えることと、売上をさらに拡大する施策を考えることでは、別のプロセスが求められます。
思考の目的を明らかにすることで、すばやく結果にたどり着けるでしょう。
思考のクセがあることを前提に考える
人間の思考には、人ぞれぞれのクセがあります。なぜなら、思考は過去に経験したことや学んだ知識に基づいて行われる行為だからです。
例えば、ある映画を観た感想が人によって異なるのと同じです。
自分自身がどのような立場から思考しているかを意識すれば、違った視点で物事を捉えられます。
考え続ける
一度結論を出した後も、考え続けましょう。事業活動において、物事の正解か不正解かを判断するのが簡単ではありません。
例えば、市場環境が変われば、正解だと思われた施策がうまく機能しないことも起こりえます。
課題を解決する施策は、計算式のように答えが1つに決まるものではないので、考え続ける姿勢が求められるのです。
クリティカルシンキングの実践ステップ
クリティカルシンキングを実践する際は、 以下に挙げた4つのステップ を意識しましょう。
- 目標・ゴールを明確にする
- 前提条件が本当に正しいか分析する
- 課題を見つける
- 課題を解決するために行動する
順番に解説するので、省略することなく実践してください。
目標・ゴールを明確にする
最初に、クリティカルシンキングの結果として得られる 目標・ゴールを設定します。
具体的には、「何を・どれくらい・いつまでに達成するか」を明確にしましょう。
ゴールがあいまいなまま思考を始めると、途中で論点がズレたり、異なる結果にたどり着いたりしてしまいます。
前提条件が本当に正しいか分析する
次に、 取り組む事象の前提条件が本当に正しいのか を疑ってみましょう。
「当たり前」と考えられていたことに疑いの目を向けることで、新しい発見が得られることがあるからです。
違和感を抱いた点は、納得できるまで情報収集をしましょう。
また、過去の経験をあてにしないことも重要です。
主観を取り除き、事実に基づいた検証を意識しましょう。
課題を見つける
前提条件を分析した後は、 取り組む事象の課題を見つけましょう。
課題を見つけるには、ロジカルシンキングが有効です。
抜け漏れなく要素を分岐させるロジックツリーのような手法を用いて、問題を体系的に整理して課題を抽出しましょう。
課題を解決するために行動する
最後に、 課題を解決するための実行計画を策定します。
「誰が、いつまでに、何をするか」といった具合に落とし込みましょう。
実行計画は進捗を確認しつつ、着実な実行を促すようにしましょう。
クリティカルシンキングのトレーニング方法・例題集
クリティカルシンキングは トレーニング方法に従って日々実践していくことで鍛えられます。
最初はうまくいかないことが多いですが、回数を重ねることでできるようになるので、めげずに続けましょう。
クリティカルシンキングの具体的なトレーニング方法
クリティカルシンキングのトレーニング方法は、日々思考することに結び付けて鍛えることが有効です。
以下で紹介する具体的なトレーニング方法を実践して、クリティカルシンキングを身に付けましょう。
複雑でわかりづらい問題を明確にする
クリティカルシンキングを鍛える方法の1つ目は、 複雑でわかりづらい問題を明確にする ことです。
以下の手順で行います。
- 問題を構成する要素をリストアップする
- リストアップした問題が相互に関連しているか図式化する
上記の方法を実践する流れで、重要な情報とそうでないものを区別し、本質的な問題に焦点を当てる必要があります。
さらに、複数の視点から問題を考察し、さまざまな解決策を想定することで、より深い理解を得られます。
複雑な問題を体系的に分析し、明確な解決策へと導く能力を養いましょう。
自分が尊敬する人について言語化する
自分が尊敬する人について言語化する ことでも、クリティカルシンキングの能力は鍛えられます。自分が尊敬する人物を言語化することは、自己理解と価値観の明確化に役立ちます。
次の手順で行いましょう。
- 尊敬する人物を選ぶ
- 尊敬している理由を深く考える
上記を実践するうえで重要なのは、単に尊敬する人の成果や特徴を挙げるのではなく、「なぜそれが自分にとって重要なのか」を自問自答することです。
例えば、尊敬する人物の持つスキルや価値観、行動、影響力の使い方など、具体的な要素を挙げ、自分の価値観や目指す姿勢とどう関連しているのかを分析します。
自分の内面にある尊敬の理由を明らかにすることで、クリティカルシンキングを鍛えられます。
社会問題の解決策を考える
クリティカルシンキングを鍛える方法の3つ目は、 社会問題の解決策を考える ことです。
社会問題の解決策を考える際には、まず問題の根本原因を理解しましょう。
具体的な方法は以下の通りです。
- 問題を多角的に分析する
- 影響を受ける人々や環境について詳細に調査する
- 既存の解決策を調査する
- 効果や限界を批判的に評価する
上記の方法で大切なのは、一面的な見方にとらわれず、多様な視点からアプローチを検討することです。
社会問題の解決策を考えることで、複雑な課題に対する深い理解と、解決するための総合的な思考力を養えます。
クリティカルシンキングの研修に参加する
クリティカルシンキングの研修に参加する ことも有効です。実際の研修に参加することは、スキルを体系的に学び実践する絶好の機会になります。
クリティカルシンキングの研修で学べることの一例は以下の通りです。
- 論理的思考
- 仮説構築
- 根拠に基づいた議論
しかし、単に理論を学ぶだけでなく、実際のケーススタディやグループディスカッションを通じて、クリティカルシンキングを実践的に訓練することが大切です。
クリティカルシンキングの研修を通じて基本を習得し、日常生活や職場での意思決定に活かしましょう。
eラーニングで学ぶ
クリティカルシンキングを鍛える方法の5つ目は、 eラーニングで学ぶ ことです。
eラーニングを活用したクリティカルシンキングの学習は、時間や場所の制約なく、自分のペースでスキルを磨ける有効な手段です。
オンラインコースやウェビナーを通じて、クリティカルシンキングの基本原則や論理的思考、問題解決の技術などを学びます。
eラーニング学習で重要なのは、受動的に内容を消化するのではなく、積極的に学んだ内容を実生活や実務に応用することです。
eラーニング学習を通じて、クリティカルシンキングを効果的に身に付け、日々の意思決定や問題解決に役立てましょう。
クリティカルシンキングの例題集
クリティカルシンキングの能力を鍛えるための例題を3つ 紹介します。仮説を提示するので反論意見を考えて、「本当にそうか?」と問いかけてください。
例題に対する答えは1つではないので、立てた仮説が本当に正しいのか考え続けましょう。
例題1:部長から整理整頓の呼びかけ
A社の部長はオフィスが散らかっていることが常態化しているので、社員に整理整頓を呼びかけています。
しかし、社員には整理整頓の意識がなく、時間がたてばまたオフィスが散らかります。
整理整頓の意識が社員に身につかないのはなぜでしょうか。
仮説は以下の通りです。
- 仮説1:忙しくて整理整頓する時間がない
- 仮説2:整理整頓しようとしても、収納する場所・スペースがない
例題2:家事をしない夫の意識を変える
主婦Aさんは2人の子どもと夫がいる共働き家庭で、家事に協力的でない夫が悩みの種です。
Aさんと夫の出勤時間と帰宅時間はほぼ一緒なのに、家事をするのはAさんのみ。
Aさんの夫に家事をしてもらうためには、どうすればいいでしょうか。
以下のような仮説が考えられます。
- 仮説1:家庭では夫も家事をするものという自覚がないため、当番制にして強制的に家事を分担する
- 仮説2:Aさんがいつも行っている家事をあえて休み、家事の大切さを夫に知ってもらう
例題3:利用者の少ない図書館を救う
ある図書館の利用者数が激減して、閉館の危機が迫っています。
図書館の利用者数はなぜ少ないのでしょうか。
仮説は以下の通りです。
- 仮説1:図書館の立地が悪くアクセスしにくい
- 仮説2:利用者が読みたい書籍がない
- 仮説3:図書館の設備が古く利用しづらい
クリティカルシンキングを身に付けて物事の本質を見抜こう
クリティカルシンキングは 未知の問題に直面した際に解決策を導き出すのに有効な思考法 です。
「本当に正しいのか?」という視点を持って思考することで、物事の本質を見極められます。
さらに、クリティカルシンキングとロジカルシンキングを併せて用いれば、論理的にも確度の高い答えを導けるでしょう。
ぜひクリティカルシンキングで物事の本質を見抜き、仕事の効率を上げてください。
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